難しい単語などをなるべく分かりやすく丁寧に解説する「元バーテンダーによる誰でも分かる」シリーズ第5回目です。
今回はモルトウイスキーの「熟成」のお話です。
※他の製造工程はこちらにまとめてありますので、どうぞ。
・元バーテンダーによる誰でも分かるモルトウイスキー製造工程まとめ
樽で熟成させる
ウイスキーがウイスキーたる由縁。
それはこの「熟成」工程にあります。
蒸留工程で得られたニューポットと言われる蒸留液を樽に詰めて数年間寝かせることを「熟成」といいます。
樽の中で数年間寝かせることによって、ウイスキーの風味に大きな変化、特徴が生まれます。
様々な工程の中でも熟成が最も風味に影響すると言えるでしょう。
樽は呼吸する
樽で寝かせることでウイスキーにどんな変化が生まれるのでしょう。
まず、ウイスキーの樽は呼吸をします。
つまり気体が出たり入ったりします。
ウイスキーの気体が出て行く時、つまりウイスキーが蒸発している時の変化はこちらです。
・水分やアルコール分と一緒に味を悪くする硫黄化合物なども一緒に蒸発する。
という訳です。
熟成させていくと年間2〜3%の量が蒸発していきます。
この減った分を「天使の分け前」と言うのですが、蒸発することで味を悪くする成分が減っていくのです。
単純に言うと美味しくなっていくのです。
20年以上熟成の進んだウイスキーはまろやかでアルコールの刺激が少ない洗練された味わいとなります。
(あまり熟成が進み過ぎても刺激が足りなくなりますが・・・)
次に気体が入ってくるとどうなるか。
その場合は酸素によってウイスキーが酸化していきます。
酸化することによって、ウイスキーの成分が変化していく、つまり熟成していきます。
また、一般に水分よりもアルコール分の方が蒸発しやすいため、熟成期間が長いとアルコール度数は低くなる傾向にあります。
樽に入れる時にウイスキーはアルコール度数を約60%にします。
アルコール度数60%の時に最も熟成が進みやすいからです。
樽の種類による影響
樽その物の成分がウイスキーに溶け出すことでも風味に影響を与えます。
ですので樽の種類というのも非常に重要になってきます。
樽の種類は
・使用材木
・大きさ
・何のお酒を作っていた樽か
・加工
で分けられます。
材木の種類
まず材木の種類を見ていきましょう。
ウイスキーの樽にはオーク材が使われます。
オークとはカシとナラの総称です。
オーク材の中でも、ホワイトオーク、ヨーロッパオーク、ミズナラが樽材として使われます。
・ホワイトオーク
アメリカンオークとも呼ばれ、世界中で幅広く使われています。
甘さが特徴です。
・ヨーロッパオーク
セシルオークとコモンオークがある。
果物のような風味。
・ミズナラ
日本のオーク材。
近年注目を集める材木で、香木のような香り。
樽の大きさ
樽の大きさの違いでウイスキーと触れる表面積が変わってきます。
小さい樽は触れる面積が広いので、熟成が早く樽の影響を強く受けます。(強く受け過ぎても樽に負けてしまうのでよくない。)
逆に樽が大きいと熟成に時間がかかります。
先ほど説明しました通り、ウイスキーは呼吸によっても熟成しますので、呼吸と樽からの影響とバランスを取って熟成を進めていかなければいけません。
樽が大きければいい、小さければいい、という訳ではなくバランスが大事です。
サイズは
・480リットル
・230リットル
・180リットル
とあります。
何のお酒を作っていた樽か
樽は新品を使うとは限りません。
ほとんどの場合、他のお酒を熟成させた樽を再利用します。
そうすることで、元々入っていたお酒の影響も受けたウイスキーが出来上がります。
主に
・シェリー樽
・バーボン樽
の2つが主流となっています。
元々ウイスキーが樽で熟成させるようになったのは、密造酒時代だと言われています。
ウイスキーに高い課税が課せられていた為、民衆は課税の安いシェリー酒の樽にウイスキーを隠したのです。
するとウイスキーにはシェリーの芳しい香りが移り、この方法が浸透していったのです。
またバーボン樽が使われるようになった背景にはバーボンの作り方が関係しています。
バーボンは法律により新樽を使わなければいけないと決まっています。
それにより一回使ったバーボン樽が大量に余ったのです。
これによりスコットランドの蒸留所は安く樽を仕入れることができるようになりました。
またその味わいも素晴らしいものです。
まとめ
ウイスキーにおいて熟成は大変重要な工程です。
また樽が大きなウエイトを占めています。
ウイスキーの樽を巡る物語は大変奥深いものなのです。
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